1) 血栓性微小血管症
Thrombotic microangiopathy(TMA)の概念 [1,2]
・疾患概念がみつかった背景から溶血性尿毒症症候群(HUS)と血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)がよく知られてきたため、下痢症状がない(Shiga-toxinによらない) HUSをatypical
HUS、原因が同定できないTTPをidiopathic TTPと呼ばれてきた。その後、HUSとTTP、atypical HUS、idiopathic TTPの病態が明らかになり、一連の症候群であると考えられている。
・TMAとは臨床的特徴(溶血性貧血、血小板減少、臓器障害)と病理的特徴(動脈あるいは毛細血管の塞栓による血管障害)をもった一連の症候群を指す。
■Primary TMA
Name
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Cause
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Clinical Feature
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ADAMTS13
deficiency-mediated TMA
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ADAMTS13遺伝子の変異
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典型的には小児期に発症するが成人発症例もみられる。虚血性の臓器障害がみられるが、AKIは一般的でない。変異のパターンによっては無症状
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Complement-mediated
TMA
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補体遺伝子の変異により第2経路の活性化が促進されることによる
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典型的には小児期に発症するが成人発症例もみられる。AKIがよくみられる。
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Coagulation-mediated
TMA
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DGKEの変異。PLG・THBDの変異も示唆されている。
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DGKEの変異の場合、典型的には1歳以前にAKIで発症する。その他の変異の臨床的特徴はわかっていない。
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Metabolism-mediated
TMA
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MMACHC遺伝子の変異(ホモシスチン尿症を伴うメチルマロン酸尿症コバラミンC型)
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典型的には1歳以前に発症する
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Acquired Disorders
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ADAMTS13
deficiency-mediated TMA
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ADAMTS13活性を阻害する自己抗体
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Shiga
toxin-mediated TMA
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Shiga毒素産生大腸菌あるいはShigella
dysenteriaeの感染
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乳幼児に多い、AKIを呈する。多くは孤発例だがアウトブレイクを起こすこともある。
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Complement
mediated TMA
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CFH活性を阻害する自己抗体
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小児および成人においてAKIを初発として見られることが多い。
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Drug-mediated TMA
(immune reaction)
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Drug-mediated
TMA (toxic dose-related reaction)
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・TTP=ADAMTS13 deficiency mediated TMA
・HUS=Shiga toxin-mediated TMA
■疾患に関連し2次的にTMAを呈しうるもの(原因は明確でない)
例)・悪性腫瘍、化学療法
・全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群
・HIV
・妊娠、HELLP症候群、経口避妊薬
・カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンやタクロリムス)
2) atypical
HUSと遺伝子異常 [3]
・atypical HUSは補体の代替経路の制御異常による疾患であることが明らかにされてきた。
・atypical HUSの中で最も多い変異はCFHの変異である。
・多くは”loss of function”型の変異だが、“gain of function”型の変異もある。
・atypical HUSの半数近くは原因遺伝子がみつかっていない。
・10%の患者は複数の遺伝子変異をもっている。特にCFIの変異とCFHあるいはMCPの変異であることが多い。
・最近ではDGKEの変異が明らかになった。
■CFH(complement factor H)
・20個のショートコンセンサスリピート(SCR、アミノ酸の繰り返し配列)からなる。
・SCR1-4がCFIの補酵素として働く部位として必要、SCR19-20が細胞表面への結合に必要で、aHUSでは多くの変異がSCR19-20に存在する。
*CFHに対する自己抗体が産生されると、多くは小児期に発症するatypical HUSをきたすことがある。C末端、特にSCR20に対する自己抗体が産生される。結果的にはCFH遺伝子変異と同様の機序となる。CFHに対する自己抗体を生じる患者においては、稀な例外を除いては、CFHR1とCFHR3(CFH関連の遺伝子は1-5まである)の喪失がみられる。これらの遺伝子の喪失とCFH自己抗体の存在がatypical HUSの独立した危険因子なのかは明らかになっていない
3) エクリズマブ [4-6]
・C5が分解されMACが形成されるのを阻害するヒトモノクローナル抗体
・当初は発作性夜間血色素尿症に対する治療として使用されはじめた。Atypical HUSの患者に対しては①血小板低下と腎障害がある17人②最低8週間の血漿交換あるいは血漿投与によって25%以上の血小板低下がない腎障害がある20人を対象として2013年に前向きの研究がなされ、いずれの患者においても腎機能の改善が得られた。
・小児のatypical HUS患者に対する前向き研究は2016年に公表されている。19人の患者に投与を行ったこの報告では、血球・腎機能の改善が得られた。この報告では、半数の患者が事前に血漿交換あるいは投与を行われていなかった。遺伝子変異も調べられているが、遺伝子変異の有無や遺伝子変異の種類によらず効果が得られた。
・日本では2013年にatypical HUSに対する適応が追加された。
・前述の2つの前向き研究では髄膜炎菌感染症患者の発症はなかったが、髄膜炎菌をはじめとする莢膜形成細菌による感染症を発症しやすくなる可能性があることから、緊急治療が必要な場合を除いては投与開始2週間前までに髄膜炎菌に対するワクチンを接種することが添付文書に記載されている。
4) Reference
1.
George,
J. N., & Nester, C. M. (2014). Syndromes of thrombotic microangiopathy. New
England Journal of Medicine, 371(7), 654-666.
2.
Kaplan,
B. S., Ruebner, R. L., Spinale, J. M., & Copelovitch, L. (2014). Current
treatment of atypical hemolytic uremic syndrome. Intractable & rare
diseases research, 3(2), 34-45.
3.
Hirt-Minkowski,
P., Dickenmann, M., & Schifferli, J. A. (2010). Atypical hemolytic uremic
syndrome: update on the complement system and what is new. Nephron Clinical
Practice, 114(4), c219-c235
4.
Zuber,
J., Fakhouri, F., Roumenina, L. T., Loirat, C., & Frémeaux-Bacchi, V.
(2012). Use of eculizumab for atypical haemolytic uraemic syndrome and C3
glomerulopathies. Nature Reviews Nephrology, 8(11), 643-657.
5.
Legendre,
C. M., Licht, C., Muus, P., Greenbaum, L. A., Babu, S., Bedrosian, C., ...
& Eitner, F. (2013). Terminal complement inhibitor eculizumab in atypical
hemolytic–uremic syndrome. New England Journal of Medicine, 368(23), 2169-2181.
6.
Greenbaum,
L. A., Fila, M., Ardissino, G., Al-Akash, S. I., Evans, J., Henning, P., ...
& Van De Kar, N. C. (2016). Eculizumab is a safe and effective treatment in
pediatric patients with atypical hemolytic uremic syndrome. Kidney
international, 89(3), 701-711.