2017年4月2日日曜日

大球性貧血

ミニレクチャーで大球性貧血・ビタミンB12欠乏は数回扱ってきた。MCVが100fLを超えているとテンションがあがるw 以下は数年前にレポートを作ったときのものと思われるが、記録として公開。
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大球性貧血 

■MCV>100fLをmacrocytocis(大赤血球症)という。原因としては、アルコール、肝疾患、甲状腺機能低下、巨赤芽球性貧血が代表的である[1]。ビタミンB12や葉酸欠乏がなくてもアルコールだけでも大赤血球症をきたしうる。アプローチとしては、まず網赤血球数、末梢血液像、ビタミンB12を測定すべきとされている[2]。末梢血液像によって巨赤芽球性か非巨赤芽球性かに分類できる。結果を誤解しうるため、骨髄穿刺は診断がつかないときに試みるべきである。巨赤芽球性のものとしては、ビタミンB12欠乏・葉酸欠乏が代表的だが、そのほか萎縮性胃炎や吸収障害、HIV治療薬やメトトレキサートなどの薬剤も原因となりうる。肝疾患・甲状腺機能低下・アルコールによるものは非巨赤芽球性である。また、出血や溶血、貧血の回復過程など網赤血球数の増加でもmacrocytosisを呈しうる。寒冷凝集素の存在、高血糖、白血球増多症はMCVの偽性高値をきたしうることにも注意が必要である。
■次に、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏を疑うべきなのは次のような場合である[3]。
 ・貧血の有無によらず末梢血液像で楕円形の大赤血球を認める
 ・末梢血液像で好中球過分葉を認める
 ・原因不明の汎血球減少
 ・説明のつかない神経学的所見や症状
 ・高齢、アルコール依存症、低栄養、極端な菜食主義者
■ビタミンB12欠乏が疑われた場合、ビタミンB12>300pg/mlならビタミンB12欠乏は否定的、<200pg/mlならビタミンB12欠乏といえる。実際は欠乏していても正常範囲内を呈してしまうことがあり、病歴・身体所見からビタミンB12欠乏を強く疑い、治療されていない患者ならメチルマロン酸・ホモシステインを測定することも有用である。ビタミンB12欠乏であれば両者とも高値を呈し、ビタミンB12の補充ですみやかに低下する。葉酸欠乏が疑われた場合は、葉酸>4ng/mlなら葉酸欠乏は否定的、<2ng/mlなら欠乏といえる。しかし、葉酸に関しては病院食を1食摂取するだけでも正常化してしまうことがあるため注意が必要である。
■ビタミンB12欠乏の症状は非常に多彩である[4]。神経症状の代表的なものは、後索・側索が亜急性に障害されることによる[5]。神経障害は左右対称性にはじまり、手より足に多い。振動覚・位置覚の低下を伴う異常感覚や運動失調ではじまる。進行すると、筋力低下、痙縮、クローヌス、対麻痺、膀胱直腸障害をきたしうる。そのほかにもさまざまな神経症状を呈しうる[5]。葉酸欠乏ではあまり神経症状はみられないとされている。

1. Macrocytosis. Up to Date
2. Evaluation of Macrocytosis. Am Fam Physician. 2009;79(3):203-208
3. Diagnosis and treatment of vitamin B12 and folate deficienxy. Up to Date
4. Vitamin B12 Deficiency. N Engl J Med 2013;368:149-160
5. Etilogy and clinical manifestations of vitamin B12 and folate deficiency

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