2015年11月17日火曜日

Red Eye

必要に迫られて読んだ論文のメモ書き。
The Pediatric Red Eye. Pediatric Clin N Am;2014:61:591-606より。


赤目(red eye)は様々な原因によるし、非特異的である。
結膜、上強膜、胸膜、角膜、眼瞼、鼻涙管の流出障害、網膜やブドウ膜などの眼球内部の異常と様々な原因によって生じうる。原因は、外傷、炎症、感染、異物、構造異常など様々であるし、目の局所的な問題である場合も全身的な問題である場合もある。重要なことは結膜炎は失明にもつながりうるということである。重度の結膜炎は角膜瘢痕を引き起こし視力に影響をきたしうるし、結膜の変性にもつながっていく。


原因の同定には病歴がとても重要である。まずは外傷歴がないかを確認する。片側性か両側性かを同定することが必要である。同時に両眼に生じたのか、片目に症状が生じて数日後にもう片目に症状が生じたのかを確認する。後者はウイルス性の結膜炎を示唆する。
視力の変化を確認することも必要である。次いで、そのほかの症状、たとえば、羞明、痛み、かゆみ、腫脹である。コンタクト・レンズを使用しているかの確認も必要である。また、家族内に結膜炎に罹患している人がいるかどうかも確認する。
red eyeはさまざまな全身性疾患とも関連する。よって原因がはっきりしないときは全身を診察することが必要である。しばしば小児はred eyeを呈する前に様々な全身症状を呈しており、red eyeが診断の手がかりになることがある。


red eyeと関連する全身疾患
・骨髄移植後、GVHD
・放射線治療後
・ヘルペスウイルス感染、水痘帯状疱疹ウイルス感染
・JIA、川崎病、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群
・Steven-Johnson症候群、中毒型表皮壊死症
・悪性腫瘍(粘膜関連リンパ組織リンパ腫、リンパ腫、脂腺細胞腫瘍、扁平上皮癌)
・天疱瘡
・自己免疫性結合組織疾患
・ビタミンA欠乏
・酒さ


ウイルス性結膜炎
・症状:流涙、膿性でない分泌、発赤、結膜浮腫が全面にたつ。
・一般的に片目が罹患し、数日後にもう一方の目が罹患する。
・上気道症状やシックコンタクトがあることが多い
・咽頭結膜熱が最も多い。たいてい、アデノウイルスによる。
・ヘルペス
・伝染性軟属腫molluscum contagiosum:眼の近くに生じた場合濾胞性の結膜炎を来しうる。


細菌性結膜炎
・典型的な特徴は両側性の膿性の分泌でああり、発赤、結膜浮腫を伴う。
・一般的に常在菌が起因菌となりうる。Staphylo- coccus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pneumococcus, Streptococcus viridans, Haemophilus influenza, Escherichia coli, and Pseudomonas aeruginosa. 0
・手から目への接触あるいは、感染した鼻咽頭粘膜から上向性に感染する
・急性の細菌性結膜炎は通常3週間以内である。病歴では、発熱やその他のsick contact、随伴する泌尿器や消化管疾患がないかを確認する。
・Neisseria関連の細菌性結膜炎は、非常に膿性であり1日以内で急激に発症する。
・クラミジアトラコマチスは依然として失明や目に長期的な変化をきたす感染性疾患として重要である。疑ったら直ちに眼科医に紹介すべきである
・クラミジアや淋菌の目の感染をみた場合、新生児期でなければ、性的虐待の可能性も考慮はすべきである。


毒物・化学物質への暴露
・患者が毒物や化学物質への暴露を主訴に受診した場合、まずただちに洗浄することが必要である。穿通性の外傷が関与している場合を除いて、洗浄せずに眼科医に送ってはならない。
・洗浄したあと、あるいは患者が洗浄していた場合、洗浄から数分たってから、pH試験紙を用いてpHを確認するべきである。
・視野を確認し、結膜の充血、角膜の透明性を確認する。
・フルオロセイン染色も行うべきである。角膜や結膜のしみがあるなら、角膜擦過傷として48時間後の改善をフォローする。角膜の不染部位があるならば、ただちに眼科医に紹介する。
・アルカリ性物質の方が危険(組織の奥まで浸透するから)


(下記は論文にはあるが、今回は割愛。気が向いたら更新。)
新生児結膜炎
蜂窩織炎
炎症性結膜炎:ぶどう膜炎uveitis、霰粒腫chalazion、眼瞼炎blepharitis
構造異常

外傷・異物

2015年11月12日木曜日

GBS感染

GBS感染症
・GBS(group B Streptococcus)はあらゆる年齢に感染症を引き起こすが、特に新生児に重篤な感染を起こす菌として重要[1]。
・10種類の莢膜型が知られている。最も多いのがtypeⅢ。次いでIaが多い[2]。
・GBS髄膜炎に罹患した児のうち約50%が5歳までの発達過程で何らかの神経学的な障害をきたす。[3]
・新生児~乳児のGBS感染症   生後6日間以内に発症 =Early-onset Disease(EOD)   生後7~89日に発症  =Late-onset Disease(LOD)  *生後90日以降に発症するもの(Late, Late-onset Disease)もあるが、たいていは28週未満の早産児や免疫不全の児でみられる[4]。

EOD
・GBS感染症の60-70%を占める
・90%以上が生後12時間以内に明らかになる
・敗血症や肺炎、髄膜炎を呈するのが一般的
・感染経路:胎内感染、垂直感染
・スクリーニング、分娩中の抗生剤投与により減少傾向
  最大のリスクファクターはスクリーニングをうけないこと

  日本の最近の報告ではLODのほうが多い[5]

LOD
・約50%が髄膜炎を呈する
・感染経路  垂直感染(約半数の児が母と同じserotypeのGBSが同定される)  手指を介した感染(医原性を含む)  母乳感染を示唆する報告もあったが、現在では感染経路とは考えられていない。 ・リスクファクターは早産、母体低年齢、低出生体重[6] ・スクリーニングや分娩中の抗生剤投与が行われるようになってもLODの発生率は変化していない

スクリーニング
・日本のガイドラインでは妊娠33-37週、CDCガイドラインでは35-37週に行うことが推奨されている[7]。
・妊娠中早期にGBS培養が陽性であっても必ずしも後期に陽性とは限らない。
・分娩前5週間以内の培養検査での陰性的中率は95-98%だが、5週間以上だとその率は低下する[8]。
・35-37週のスクリーニングで約4%の妊婦が偽陰性となり、EODの約60%がこの偽陰性となった妊婦から生じる[9]。

LODも同様にスクリーニングの段階では偽陰性の例が約半数あったとする報告がある[10]
<日本のガイドライン>
妊娠33-37週に培養検査を行う
検体は膣入口部ならびに肛門内から採取する
以下の妊婦には経腟分娩中あるいは前期破水後、ペニシリン系薬剤により感染予防を行う
前児がGBS感染症(今回のスクリーニング陰性であっても)
膣周辺培養でGBS検出(破水/陣痛のない予定C/Sでは投与必要なし)
今回妊娠中の尿培養でGBS検出
GBS保菌状態不明かつ以下のいずれかの場合(妊娠37週未満分娩、破水後18時間以上経過、発熱あり)
GBS陽性妊婦やGBS保菌状態不明妊婦の早産時、前期破水時、GBS除菌のために抗生剤を3日間投与する
<CDCのガイドライン>[12]
◆分娩中のGBS予防が必要とされる
・前の児がGBS感染症をきたした
・今回の妊娠期間中に尿からGBSが検出された
・今回の妊娠期間中後期に経膣・経直腸スクリーニングでGBS陽性であった
 *GBSスクリーニングは妊娠35-37州が望ましい
・下記の状況で、分娩開始時にGBS感染の有無が不明な場合(培養が行われていないか不十分、結果未着など)
 ・妊娠37週未満での分娩
 ・破水から18時間以上
 ・分娩時に38度以上の発熱
 ・分娩中の拡散増幅検査でGBSが陽性であった
◆分娩中のGBS予防が必要とされない
 ・前回の妊娠でGBSが分離された(上記を満たさない場合のみ)
 ・前回の妊娠で尿からGBSが検出された(上記を満たさない場合のみ)
 ・分娩中のリスクファクターによらず、今回の妊娠期間中後期での経膣・経直腸スクリーニングが陰性であった
 ・GBS分離の状況や妊娠期間によらず、羊膜が正常で分娩開始前に帝王切開が施行される場合

予防
・GBSの予防接種があれば、スクリーニングや分娩中の抗生剤投与から漏れてしまった人(スクリーニングで偽陰性だった、墜落分娩、28週未満の早産)の予防ができるかもしれない[11]。 ・現在のところ認可された予防接種はない ・非妊婦における試験はクリアし、妊婦を対象にしたtrialが行われているところである。 ・手洗い



1. Prevention of Perinatal Group B Streptococcal Disease; guidelines from CDC,2010
2. Characteristics of Group B Streptococcus Isolated from Infants with Invasive   Infections: A Population-Based Study In Japan. Jpn.J.Infect.Dis;2014:67:356-360

3. An overview of global GBS epidemiology.Vaccine;2013:31S:D7-12.
4. Group B streptococcal infection in neonates and young infants; up to date
5.厚生労働科学研究費補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」
「重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究(H22‐新興一般‐013)」
6.Risk Factors for Late-Onset Group B Streptococcal Disease Before and After Implementation of Universal Screening and Intrapartum Antibiotic Prophylaxis. J Pediatric Infect Dis Soc. 2015 Oct 12. pii: piv067. [Epub ahead of print]
7.産婦人科学会産婦人科ガイドライン2014より
8.Neonatal group B streptococcal dissease:Prevention Up to Date.
9.Evaluation of Universal Antenatal Screening for Group B Streptococcus. N ENGL J MED;2009:360(25):2626-35
10. Group B Sterptococcus Late-Onset Disease; 2003-2010. Pediatrics;2013:131(2):361-368
11. Bacterial Meningitis in Infants. Clin Perinatol;2015:42:29-45
12.prevention of perinatal group B Streptococcal disease;revised guidlines from CDC,2010