・GBS(group B Streptococcus)はあらゆる年齢に感染症を引き起こすが、特に新生児に重篤な感染を起こす菌として重要[1]。
・10種類の莢膜型が知られている。最も多いのがtypeⅢ。次いでIaが多い[2]。
・GBS髄膜炎に罹患した児のうち約50%が5歳までの発達過程で何らかの神経学的な障害をきたす。[3]
・新生児~乳児のGBS感染症 生後6日間以内に発症 =Early-onset Disease(EOD) 生後7~89日に発症 =Late-onset Disease(LOD) *生後90日以降に発症するもの(Late, Late-onset Disease)もあるが、たいていは28週未満の早産児や免疫不全の児でみられる[4]。
EOD
・GBS感染症の60-70%を占める
・90%以上が生後12時間以内に明らかになる
・敗血症や肺炎、髄膜炎を呈するのが一般的
・感染経路:胎内感染、垂直感染
・スクリーニング、分娩中の抗生剤投与により減少傾向
最大のリスクファクターはスクリーニングをうけないこと
日本の最近の報告ではLODのほうが多い[5]
LOD
・約50%が髄膜炎を呈する
・感染経路 垂直感染(約半数の児が母と同じserotypeのGBSが同定される) 手指を介した感染(医原性を含む) 母乳感染を示唆する報告もあったが、現在では感染経路とは考えられていない。 ・リスクファクターは早産、母体低年齢、低出生体重[6] ・スクリーニングや分娩中の抗生剤投与が行われるようになってもLODの発生率は変化していない
スクリーニング
・日本のガイドラインでは妊娠33-37週、CDCガイドラインでは35-37週に行うことが推奨されている[7]。
・妊娠中早期にGBS培養が陽性であっても必ずしも後期に陽性とは限らない。
・分娩前5週間以内の培養検査での陰性的中率は95-98%だが、5週間以上だとその率は低下する[8]。
・35-37週のスクリーニングで約4%の妊婦が偽陰性となり、EODの約60%がこの偽陰性となった妊婦から生じる[9]。
LODも同様にスクリーニングの段階では偽陰性の例が約半数あったとする報告がある[10]
<日本のガイドライン>
妊娠33-37週に培養検査を行う
検体は膣入口部ならびに肛門内から採取する
以下の妊婦には経腟分娩中あるいは前期破水後、ペニシリン系薬剤により感染予防を行う
前児がGBS感染症(今回のスクリーニング陰性であっても)
膣周辺培養でGBS検出(破水/陣痛のない予定C/Sでは投与必要なし)
今回妊娠中の尿培養でGBS検出
GBS保菌状態不明かつ以下のいずれかの場合(妊娠37週未満分娩、破水後18時間以上経過、発熱あり)
GBS陽性妊婦やGBS保菌状態不明妊婦の早産時、前期破水時、GBS除菌のために抗生剤を3日間投与する
<CDCのガイドライン>[12]
◆分娩中のGBS予防が必要とされる
・前の児がGBS感染症をきたした
・今回の妊娠期間中に尿からGBSが検出された
・今回の妊娠期間中後期に経膣・経直腸スクリーニングでGBS陽性であった
*GBSスクリーニングは妊娠35-37州が望ましい
・下記の状況で、分娩開始時にGBS感染の有無が不明な場合(培養が行われていないか不十分、結果未着など)
・妊娠37週未満での分娩
・破水から18時間以上
・分娩時に38度以上の発熱
・分娩中の拡散増幅検査でGBSが陽性であった
◆分娩中のGBS予防が必要とされない
・前回の妊娠でGBSが分離された(上記を満たさない場合のみ)
・前回の妊娠で尿からGBSが検出された(上記を満たさない場合のみ)
・分娩中のリスクファクターによらず、今回の妊娠期間中後期での経膣・経直腸スクリーニングが陰性であった
・GBS分離の状況や妊娠期間によらず、羊膜が正常で分娩開始前に帝王切開が施行される場合予防
・GBSの予防接種があれば、スクリーニングや分娩中の抗生剤投与から漏れてしまった人(スクリーニングで偽陰性だった、墜落分娩、28週未満の早産)の予防ができるかもしれない[11]。 ・現在のところ認可された予防接種はない ・非妊婦における試験はクリアし、妊婦を対象にしたtrialが行われているところである。 ・手洗い
1. Prevention of Perinatal Group B
Streptococcal Disease; guidelines from CDC,2010
2. Characteristics of Group B
Streptococcus Isolated from Infants with Invasive Infections: A Population-Based Study In
Japan. Jpn.J.Infect.Dis;2014:67:356-360
3. An overview of global GBS
epidemiology.Vaccine;2013:31S:D7-12.
4. Group B streptococcal infection
in neonates and young infants; up to date
5.厚生労働科学研究費補助金「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」
「重症型のレンサ球菌・肺炎球菌感染症に対するサーベイランスの構築と病因解析,その診断・治療に関する研究(H22‐新興‐一般‐013)」
6.Risk Factors for Late-Onset Group B
Streptococcal Disease Before and After Implementation of Universal Screening
and Intrapartum Antibiotic Prophylaxis. J Pediatric Infect Dis Soc. 2015 Oct 12. pii: piv067. [Epub ahead of print]
7.産婦人科学会産婦人科ガイドライン2014より
8.Neonatal group B streptococcal dissease:Prevention
Up to Date.
9.Evaluation of Universal Antenatal
Screening for Group B Streptococcus. N ENGL J MED;2009:360(25):2626-35
10. Group B Sterptococcus
Late-Onset Disease; 2003-2010. Pediatrics;2013:131(2):361-368
11. Bacterial Meningitis in Infants.
Clin Perinatol;2015:42:29-45
12.prevention of perinatal group B Streptococcal disease;revised guidlines from CDC,2010
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