Optimizing the management of depression:primary care experience.Psychiatry Research;2014:220:S45-57より。プライマリケアでのうつ病診療について。
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・うつ病のスクリーニングにはPatient Health QUestionnaireの2つの質問(抑うつ気分、興味関心の喪失)を用いる。
・スクリーニングがアウトカムを向上させるかは結論が出ていないが、プライマリケアでのスクリーニングはうつ病の検出を増加させる。しかし、適切なフォローアップと治療につなげなければ症状の改善は乏しい。よって
これらができる状況でスクリーニングを行うことが推奨されている。
・幅広くスクリーニングを行っても的中率は低いので、ハイリスクグループに限ってスクリーンニングを行うのもよい。
・うつ病の症状が検出されるかは、精神的な症状をプライマリケア医に打ち明けるかによっても決まる。
・うつ病の正確な診断は最初の重要なポイントであるけれども経過中に新たな徴候や症状が出現してこないかを常に再評価する必要がある。様々なタイプの不安、精神症状、軽躁・躁や双極性のエピソードなどである。
・うつ病を診断するなら、他の精神疾患や身体疾患が隠れていないかを評価する。自殺リスクも評価する。
薬物治療
・薬物治療:SSRI、SNRIが第一選択。三環系(TCAs)は第2選択。3rd lineとしてMAO阻害薬。
・trazodone(レスリン®、デジレル®)は第2選択のオプション。
・SSRIはTCAsよりも副作用は少ないとされているけれども、SSRIはTCAsよりも嘔気、下痢、興奮、不眠、神経質の副作用が多いとされている。TCAsは便秘、口渇、diziness、汗、視界のかすみがより強いとされる。
・2009年のmeta-analysisからは、中等度~重度のうつ病に対しての初期治療としては、escitalopram(レクさプロ®)とsertraline(ジェイゾロフト®)が効果と忍容性のバランスから最も良い選択ではないかと思われる。
・薬剤の副作用はアドヒアランスを低下させるだけでなく患者のQOLや社会機能(social function)を低下させることが明らかになってきている。
・症状が軽快してきたが副作用が続くのであれば副作用のマネジメントに焦点をあてるべきである。
・副作用のコントロールに追加の薬を使用することは慎重にすべきである。例えば、嘔気は最初の2週間に強いので、食後の内服にする、1回/dayにする、gastric motility agentsを使用するなどとし、単に制吐剤を処方しない。
・頭痛、不眠、過鎮静、神経質、振戦など中枢神経系の副作用もよくみられる。短期間のBZ系や非BZ系の使用は睡眠と抑うつの改善に有効であるかもしれない。
・うつ病の症状として性欲の低下、性機能障害はあるけれども、抗うつ薬も様々な性機能障害をきたす。SSRIを内服している人の50%にも及ぶのではないかと考えられている。用量の原料や他の薬への変更の他に通常解決方法はない。
精神療法
・うつ病に対しての精神療法の重要な構成要素:①中核症状の緩和、②精神療法を行うにあたり特定の方法が用いられるように注意する(マニュアルなど)、③治療者と患者との間で高度なアクティビティが期待される(患者への宿題を含む)、④スケールをつけることで症状を慎重にモニターする、⑤疾病についての心理教育を行う、⑥治療には時間が限られることが多いので薬物治療と並行して行われる。
・認知行動療法(CBT)は患者が気分・考え・行動がどのように相互作用してうつを増悪したりするのかを理解し、評価してもらう。軽度~中等度のうつ病の治療には有効。
・interpersonal therapy(IPT)は、最近の人間関係について扱い、社会的関係について焦点を当てる。
・IPTは有用であるようだけれども、CBTや薬物療法よりも有用とするエビデンスはないし、IPTと薬物療法の併用が、それぞれ単独よりも優れているとするエビデンスはない。
・プライマリケアの場面で精神療法を行うことは、時間の制約もあるし十分なトレーニングをうけていないという点でも実用的ではない。しかし、プライマリケアにおける精神療法、特にCBTは軽度~中等度のうつ病に対して有用であるといくつかの研究で示されている。
・薬物療法や他のセラピーと同時に行うことができ、簡単に開始することができる治療法を見つけることは、全体のコストを下げることにもつながるし不安や抑うつに苦しむ人たちを改善させることにもつながるだろう
somatic therapy
・運動、光療法、ω3脂肪酸、DHEA、ヨガなど。
・ヨガについては短期的な効果は明らかにされているが長期的な効果はわかっていない
治療のゴール
・抑うつ症状がなくなること。
・急性期は大うつ病エピソードの緩和、ベースラインの機能に完全に回復すること、を目指す。
・うつ病のエピソードを繰り返しているという病歴よりも、軽度の症状が残存していることは、うつ病エピソードを再発することの強い予測因子である。
寛解
・患者が回復し、良好な状態でいること、症状が再燃しないこと。
・抑うつ気分と興味関心の消失の両方が3週間以上なく、うつ病エピソードの症状が3つ以上残っていないこと、という定義もある。
治療反応性の評価
・初期治療への反応性の評価や寛解の進行具合を評価するツールはたくさんある。measurement-based-careとよばれる。
・これらのツールを精神疾患のマネジメントに用いることはQOLを高め臨床的なアウトカムを改善させうる。
・Brief Patient Health Questionnare(PHQ-9)やQuick Inventory of Depressive Symptomatology(QIDS-SR)は自己記入式で簡潔でありDSM-Ⅳの診断基準に沿っているためよく用いられている。
・副作用はコンプライアンスに影響するため、情報を集めるために副作用wはかるスケールも用いられる。
・初期治療のプランがたてられたならば、規則的な基準でフォローすることが重要である。
・薬物治療が開始後は1-2週ごとにフォローするべきで、この期間は副作用が出やすいからである。
・重症度や治療への反応性によってフォロー間隔は2-4週ごとかそれ以上にしていく。
治療への反応はどのぐらいで得られるか
・抗うつ薬の治療効果は2-4週間かそれ以上たってあらわれる。
・最近のメタアナリシスでは抗うつ薬の効果は1-2週間以内のうちにあらわれてそれ以降の反応はゆるやかに減少するため、初期の改善が最終的な寛解の指標になるとされている。
部分的にしか反応が得られない理由
・約3分の2の患者が最初の抗うつ薬で完全な寛解を得られない。これには様々な理由がある。不適切・不十分な診断、併存症(不安、物質乱用、ADHD、線維筋痛症のような慢性疼痛)、不適切な治療選択、用量が不十分、不適切な精神療法の提供、薬物動態に影響する因子がある、アドヒアランスが不十分、副作用が続く、治療的関係の問題などである。
・部分的にしか反応が得られない場合、診断を再評価することが必要で、診断がはっきりしないときや良い効果を得ることを試みてもできなかった場合は、精神科医へ相談することも必要である。
・抗うつ薬を増量しても改善がえられないときは、アドヒアランス不良、副作用、希死念慮の存在など他の理由がないかを検討する必要がある。
アドヒアランスを高める努力
・患者に対し、①抗うつ薬開始から治療効果があらわれるまではタイムラグがあること、②治療効果を得られるまでの全体の経過、③一般的な副作用と重篤な副作用、④よくなったと思っても抗うつ薬内服を続ける必要があること を伝える必要がある。
・フォローの外来はアドヒアランスに影響しうる心理社会的な要因を探るのに良い機会となる。
・うつ病の有病率が高いと強調することは、スティグマを減らしコンプライアンスを高めることにつながるとされている。
第一選択の抗うつ薬に部分的または限られた藩王しか得られなかった場合の治療戦略
・第一選択の抗うつ薬で部分的にしか有効でなかった場合、薬剤を変更するか他剤を追加するかを検討する。
・変更については、違うクラスに変更するのか同じクラスの中で変更するのかについては結論は出ていない。
continuation phase
・一度寛解が達成できたあとは、寛解を維持する必要がある。
・うつ病エピソードから回復後の半年間は再発しやすい。
・約20%が再発するとされている。
・薬物療法が中断されたケースや用量を減量したケースで再発しやすい。
・初回のうつ病エピソードで薬物治療に反応し寛解が得られた場合、抗うつ薬は少なくとも4-9か月は減量せず治療量を継続すべきである。
・CBTは有用である。長期的に再発・再燃を防ぐことが明らかになっている。抗うつ薬と併用することで、抗うつ薬の治療期間を短くすることができるかもしれない。
・family physicianはできる限り早く、再発や再燃の徴候に気づき、治療する必要がある。患者や家族に再発の徴候を理解してもらうのも役立つかもしれない。
maintenance phase
・今まで気づかれていなかった残存する症状を解決し、病前の機能へと完全に回復することを維持し、再発するのを防ぐことを目標とする。
・maintenance treatmentは3つ以上のうつ病症状を呈し患者に対して行われるべきである。
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