2016年1月31日日曜日

マイコプラズマ

マイコプラズマの診断方法について。
Daxboeck F, Krause R, Wenisch C. Laboratory diagnosis of Mycoplasma pneumoniae infection. Clin Microbiol Infect . 2003 ;9(4):263–73. より
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寒冷凝集素
・M.pneumoniaeに対して最初に反応する液性免疫として最初に形成される。感染から6週間以内に感染前のレベルに戻る。
・寒冷凝集素はM.pneumoniae感染患者の50-60%でしか陽性にならない。M.pneumoniae以外にも様々な感染によって産生される(例:EBV,CMV、Klebsiella pneumoniae、リンパ腫、自己免疫疾患など)
CF法(complement fixation test)
・感度特異度ともに十分でない。
・CF法で用いられる抗原は、M.pneumoniaeから抽出されたchloroform methanol glycolipidで、人間や細菌・異物のエピトープと交差反応をおこす。例えば、細菌性髄膜炎で免疫ブロット法では特異抗体は上昇していないにも関わらずは抗体価の上昇がみられることがある。
MAG(microparticle aggulatination assay)
・M.pneumoniaeに特異的な抗体による赤血球の凝集をみるのがこの検査方法の原理である。
※しかし、CF法もMAG法も抗体の種類を区別することができず、診断の遅れにつながる。特異的IgGは経過とともにわずかに上昇し、症状出現から5週間後に抗体価はピークに達する。通常、発症から1週間以内ではIgGは測定可能にならない。

・感染のあとは抗体は4年まで上昇がみられることがある。
・低値だけれどもIgGが測定可能である場合はしたがって、感染の早期か過去の感染を示唆する。特異的IgGが低値である場合は、2-3週間後に再度測定するべきである。
・CF法とMAG法は主観的な分析であり、診断には少なくとも4倍以上の抗体価を認める必要がある。抗体価が著名な上昇の場合(CF法で>1:80、MAG法で>1:160)の場合は抗体だけで診断が可能である。
・迅速な診断を行うにはIgMやIgAが有用かもしれない。

IgM・IgA
・感染の1週目に出現し、3週目にピークに達する。数か月間はもとのレベルまで低下しない。
・IgMによる診断の欠点は、成人ではかならずしもこれらの抗体が産生されないことであり、おそらくこれは過去の複数の感染の結果による。
・したがって、高齢者ではIgMが陰性であるといってもM.pneumoniaeの急性感染を否定することはできない。
・IgMの測定は小児では有用。
・最近の研究では特異的IgAのほうが診断的性能に優れるとされている。
・IgAやIgMの検出は多くはELISA法による。様々なキットがあり、IgMの検出にはカードにより迅速に検出できる方法もある。
・これらのELISA法での検査の特異度について、M.pneumoniaeに最も近いM.genitaliumに対する抗体との交差反応に注意する必要がある。
・ウエスタンブロット法によるM.pneumoniaeの検出法もある。この方法では、他の方法よりも低い抗体価であっても検出することができる。
・脳脊髄液中での特異抗体の検出は、中枢神経へのマイコプラズマ感染が疑われた場合に有用である。
その他
・M.pneumoniaeの培養はルーチンに行うことは推奨されない。
・PCR
*LAMP法はDNAを直接検出する
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⇒血清学的な診断とdirectな診断とを組み合わせる。
マイコプラズマの肺外症状や、高齢者でのIgMの測定意義など調べたい内容は続く。



2016年1月17日日曜日

プライマリケアでのうつ病診療

Optimizing the management of depression:primary care experience.Psychiatry Research;2014:220:S45-57より。プライマリケアでのうつ病診療について。
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・うつ病のスクリーニングにはPatient Health QUestionnaireの2つの質問(抑うつ気分、興味関心の喪失)を用いる。
・スクリーニングがアウトカムを向上させるかは結論が出ていないが、プライマリケアでのスクリーニングはうつ病の検出を増加させる。しかし、適切なフォローアップと治療につなげなければ症状の改善は乏しい。よって
これらができる状況でスクリーニングを行うことが推奨されている。
・幅広くスクリーニングを行っても的中率は低いので、ハイリスクグループに限ってスクリーンニングを行うのもよい。
・うつ病の症状が検出されるかは、精神的な症状をプライマリケア医に打ち明けるかによっても決まる。
・うつ病の正確な診断は最初の重要なポイントであるけれども経過中に新たな徴候や症状が出現してこないかを常に再評価する必要がある。様々なタイプの不安、精神症状、軽躁・躁や双極性のエピソードなどである。
・うつ病を診断するなら、他の精神疾患や身体疾患が隠れていないかを評価する。自殺リスクも評価する。
薬物治療
・薬物治療:SSRI、SNRIが第一選択。三環系(TCAs)は第2選択。3rd lineとしてMAO阻害薬。
・trazodone(レスリン®、デジレル®)は第2選択のオプション。
・SSRIはTCAsよりも副作用は少ないとされているけれども、SSRIはTCAsよりも嘔気、下痢、興奮、不眠、神経質の副作用が多いとされている。TCAsは便秘、口渇、diziness、汗、視界のかすみがより強いとされる。
・2009年のmeta-analysisからは、中等度~重度のうつ病に対しての初期治療としては、escitalopram(レクさプロ®)とsertraline(ジェイゾロフト®)が効果と忍容性のバランスから最も良い選択ではないかと思われる。
・薬剤の副作用はアドヒアランスを低下させるだけでなく患者のQOLや社会機能(social function)を低下させることが明らかになってきている。
・症状が軽快してきたが副作用が続くのであれば副作用のマネジメントに焦点をあてるべきである。
・副作用のコントロールに追加の薬を使用することは慎重にすべきである。例えば、嘔気は最初の2週間に強いので、食後の内服にする、1回/dayにする、gastric motility agentsを使用するなどとし、単に制吐剤を処方しない。
・頭痛、不眠、過鎮静、神経質、振戦など中枢神経系の副作用もよくみられる。短期間のBZ系や非BZ系の使用は睡眠と抑うつの改善に有効であるかもしれない。
・うつ病の症状として性欲の低下、性機能障害はあるけれども、抗うつ薬も様々な性機能障害をきたす。SSRIを内服している人の50%にも及ぶのではないかと考えられている。用量の原料や他の薬への変更の他に通常解決方法はない。
精神療法
・うつ病に対しての精神療法の重要な構成要素:①中核症状の緩和、②精神療法を行うにあたり特定の方法が用いられるように注意する(マニュアルなど)、③治療者と患者との間で高度なアクティビティが期待される(患者への宿題を含む)、④スケールをつけることで症状を慎重にモニターする、⑤疾病についての心理教育を行う、⑥治療には時間が限られることが多いので薬物治療と並行して行われる。
・認知行動療法(CBT)は患者が気分・考え・行動がどのように相互作用してうつを増悪したりするのかを理解し、評価してもらう。軽度~中等度のうつ病の治療には有効。
・interpersonal therapy(IPT)は、最近の人間関係について扱い、社会的関係について焦点を当てる。
・IPTは有用であるようだけれども、CBTや薬物療法よりも有用とするエビデンスはないし、IPTと薬物療法の併用が、それぞれ単独よりも優れているとするエビデンスはない。
・プライマリケアの場面で精神療法を行うことは、時間の制約もあるし十分なトレーニングをうけていないという点でも実用的ではない。しかし、プライマリケアにおける精神療法、特にCBTは軽度~中等度のうつ病に対して有用であるといくつかの研究で示されている。
・薬物療法や他のセラピーと同時に行うことができ、簡単に開始することができる治療法を見つけることは、全体のコストを下げることにもつながるし不安や抑うつに苦しむ人たちを改善させることにもつながるだろう
somatic therapy
・運動、光療法、ω3脂肪酸、DHEA、ヨガなど。
・ヨガについては短期的な効果は明らかにされているが長期的な効果はわかっていない
治療のゴール
・抑うつ症状がなくなること。
・急性期は大うつ病エピソードの緩和、ベースラインの機能に完全に回復すること、を目指す。
・うつ病のエピソードを繰り返しているという病歴よりも、軽度の症状が残存していることは、うつ病エピソードを再発することの強い予測因子である。
寛解
・患者が回復し、良好な状態でいること、症状が再燃しないこと。
・抑うつ気分と興味関心の消失の両方が3週間以上なく、うつ病エピソードの症状が3つ以上残っていないこと、という定義もある。
治療反応性の評価
・初期治療への反応性の評価や寛解の進行具合を評価するツールはたくさんある。measurement-based-careとよばれる。
・これらのツールを精神疾患のマネジメントに用いることはQOLを高め臨床的なアウトカムを改善させうる。
・Brief Patient Health Questionnare(PHQ-9)やQuick Inventory of Depressive Symptomatology(QIDS-SR)は自己記入式で簡潔でありDSM-Ⅳの診断基準に沿っているためよく用いられている。
・副作用はコンプライアンスに影響するため、情報を集めるために副作用wはかるスケールも用いられる。
・初期治療のプランがたてられたならば、規則的な基準でフォローすることが重要である。
・薬物治療が開始後は1-2週ごとにフォローするべきで、この期間は副作用が出やすいからである。
・重症度や治療への反応性によってフォロー間隔は2-4週ごとかそれ以上にしていく。
治療への反応はどのぐらいで得られるか
・抗うつ薬の治療効果は2-4週間かそれ以上たってあらわれる。
・最近のメタアナリシスでは抗うつ薬の効果は1-2週間以内のうちにあらわれてそれ以降の反応はゆるやかに減少するため、初期の改善が最終的な寛解の指標になるとされている。
部分的にしか反応が得られない理由
・約3分の2の患者が最初の抗うつ薬で完全な寛解を得られない。これには様々な理由がある。不適切・不十分な診断、併存症(不安、物質乱用、ADHD、線維筋痛症のような慢性疼痛)、不適切な治療選択、用量が不十分、不適切な精神療法の提供、薬物動態に影響する因子がある、アドヒアランスが不十分、副作用が続く、治療的関係の問題などである。
・部分的にしか反応が得られない場合、診断を再評価することが必要で、診断がはっきりしないときや良い効果を得ることを試みてもできなかった場合は、精神科医へ相談することも必要である。
・抗うつ薬を増量しても改善がえられないときは、アドヒアランス不良、副作用、希死念慮の存在など他の理由がないかを検討する必要がある。
アドヒアランスを高める努力
・患者に対し、①抗うつ薬開始から治療効果があらわれるまではタイムラグがあること、②治療効果を得られるまでの全体の経過、③一般的な副作用と重篤な副作用、④よくなったと思っても抗うつ薬内服を続ける必要があること を伝える必要がある。
・フォローの外来はアドヒアランスに影響しうる心理社会的な要因を探るのに良い機会となる。
・うつ病の有病率が高いと強調することは、スティグマを減らしコンプライアンスを高めることにつながるとされている。
第一選択の抗うつ薬に部分的または限られた藩王しか得られなかった場合の治療戦略
・第一選択の抗うつ薬で部分的にしか有効でなかった場合、薬剤を変更するか他剤を追加するかを検討する。
・変更については、違うクラスに変更するのか同じクラスの中で変更するのかについては結論は出ていない。
continuation phase
・一度寛解が達成できたあとは、寛解を維持する必要がある。
・うつ病エピソードから回復後の半年間は再発しやすい。
・約20%が再発するとされている。
・薬物療法が中断されたケースや用量を減量したケースで再発しやすい。
・初回のうつ病エピソードで薬物治療に反応し寛解が得られた場合、抗うつ薬は少なくとも4-9か月は減量せず治療量を継続すべきである。
・CBTは有用である。長期的に再発・再燃を防ぐことが明らかになっている。抗うつ薬と併用することで、抗うつ薬の治療期間を短くすることができるかもしれない。
・family physicianはできる限り早く、再発や再燃の徴候に気づき、治療する必要がある。患者や家族に再発の徴候を理解してもらうのも役立つかもしれない。
maintenance phase
・今まで気づかれていなかった残存する症状を解決し、病前の機能へと完全に回復することを維持し、再発するのを防ぐことを目標とする。
・maintenance treatmentは3つ以上のうつ病症状を呈し患者に対して行われるべきである。

2016年1月4日月曜日

頭頚部の神経症候群

顔面神経麻痺について調べている中で発見。頭頚部の神経症候群について。Neurologic Syndrome of the Head and Neck. Prim Care Clin Office Pract;2014:41:133-149. まだ三叉神経痛にもお目にかかってはいないが、いずれ出会うことを期待。
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耳痛
・耳の感覚には脳神経Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、ⅩとC2、C3が関与
・耳痛が耳疾患の場合、耳の診察で通常異常が見つかる
・耳の診察が正常の場合は、神経痛か関連痛。鑑別は様々。
 ・悪性外耳道炎;耳痛に加えて顔面麻痺をきたすことがある。
 ・耳の診察で耳痛の説明がつかず、55歳以上で、濃厚な喫煙・飲酒歴がある場合は頭頚部癌を念頭に画像検査も検討するべき。
 ・側頭動脈炎の疼痛が耳に放散することもある。
副鼻腔痛(sinus pain)
・他の原因による顔面痛とよく混同される。
・急性副鼻腔炎は局所痛も関連痛もきたしうる。
帯状疱疹
・典型的には2-3日続く様々な程度の痛みが前駆症状としてみられる。
・約5%の患者が再発するが、多くは免疫不全の患者である。
・帯状疱疹後神経痛は痛みが90日間以上続くもの
・抗ウイルス薬はウイルスの複製を防ぐのに効果的であって、慢性痛を予防したり改善させたりはしない。急性期の疼痛の期間と程度を減らす。
・ステロイドも慢性痛を予防はしないけれども急性疼痛を減らす
眼部帯状疱疹
・前駆症状:強い頭痛、不快感、発熱
・痛みや感覚過敏が、患側の眼や前額・頭頂部に生じる
・発疹がデルマトームに沿って出現し、結膜炎や上強膜炎、眼瞼下垂がみられる
・発赤が鼻まで拡大してくると、角膜炎をきたしうる。角膜炎は疼痛が強い。
・眼科医に急いで相談する
Ramsay-Hunt症候群
・Bell麻痺よりも予後不良
・重度な痛みや難聴を伴う場合はBell麻痺よりもこの診断を考えるべき。
・発症3週間を経過するまでは麻痺の回復は予測できない
・発症72時間以内に治療が開始されれば約75%の患者は回復する。よって早期に診断することが重要。
顔面神経麻痺
・腫瘍性を疑うべき場合
 ・緩徐、進行性の発症
 ・進行性で遷延する麻痺で改善しない(Bell麻痺なら通常3週間以内である程度は改善する)
 ・痛みがある/あった
 ・他の脳神経の関与がある
 ・局所の皮膚腫瘍の既往がある
・両側性、発症2-3週間で改善しない場合には神経科医に相談するべき
・小児の場合は約70%が2次的な原因で生じていると同定できる
・Lyme病蔓延地域以外では、小児の顔面神経麻痺のもっとも一般的な原因は急性中耳炎である。中耳炎の発症5-8日で麻痺が出現する。
・Lyme病での顔面神経麻痺は片側性のことも両側性のこともある。2か月程度続くこともある。無痛性でやわらかくない顔面の腫脹と紅斑が顔面神経麻痺の発症前にみられることがある。
・新生児の顔面神経麻痺の78-90%は分娩時の損傷による
上咽頭神経痛
・稀。性差は特にない
・上咽頭神経は迷走神経の枝である。頸動脈分岐部に隣接していて喉頭の輪状甲状筋を支配する
・典型的には数秒から数分続く電撃痛である。甲状軟骨または梨状窩側から下顎、ときに耳にかけて痛みが生じる。左側のことが多い。誘発部位は甲状軟骨の上側面。痛みの発作は、嚥下、声を張る、あくび、頭をうごかす、首をひっぱる、咳、いびき、会話、鼻をかむなどによって引き起こされる。
・原因:インフルエンザなどの先行感染、扁桃摘出や頸動脈内膜剥離術などの手術による瘢痕化
・鑑別:舌咽神経痛、中間神経痛(顔面神経の枝)、頸動脈痛、頭頸部癌
・上咽頭神経ブロックでの症状改善は診断につながる。カルバマゼピンも有用。
三叉神経痛
・通常50歳以上に生じる。女性に多い。
・誘発部位:顔面、鼻、唇に位置し、通常大きくはない。
・持続は通常数秒だが1-2分続くこともある。頻度は様々。95%が片側性。神経学的徴候は明らかにならない。睡眠中には起こらない。第2枝(上顎神経)が最も侵され、次いで第3枝(下顎神経)が多い。
・原因・鑑別:たくさんある。多発性硬化症、脳底動脈瘤、腫瘍、脳幹梗塞
・カルバマゼピン。その他、バクロフェン、クロナゼパム、バルプロ酸、ラモトリギン、などなど
舌咽神経痛
・稀。
・中咽頭から耳にかけての疼痛。喉や耳の深部の痛みとして感じられる。持続は通常数秒~1分程度。痛みの発作は嚥下、咀嚼、咳、いびき、会話、あくび、特定の味覚、首や外耳道へ触れることなどによって引き起こされる。
・誘発部位:耳介前部・後部、頸部、喉、外耳道
・三叉神経痛の第3枝に限局したものと混同されうる
・原因・鑑別;腫瘍、Chiari奇形1型、梗塞、動脈による圧迫、椎骨動脈解離
・トリガーポイント注射での症状改善は診断につながる。身体診察では通常異常はみつからない。治療はカルバマゼピンなど三叉神経痛に準じる。
中間神経痛
・きわめて稀
・中間神経は顔面神経の小さな枝で、内耳、中耳、乳突蜂巣、耳管、耳介の一部を支配する。
・通常耳の深部の痛み。眼窩の奥や後鼻腔の痛みとして出現することもある。発作の間、苦味を感じる場合がある。持続は通常数秒~数分。
・誘発部位;外耳道後壁。
・耳に限局した舌咽神経痛との鑑別は困難
・治療は三叉神経痛に準じる。
傍三叉神経症候群
・稀。中年、男性に多い
・三叉神経領域、特に眼神経領域の感覚低下。三叉神経支配筋の筋力低下、すなわち咀嚼や嚥下の問題が生じる。通常、症状は激烈ではない。Horner症候群に類似した眼交感神経の両側の麻痺、通常縮瞳と下垂を呈することもある。Horner症候群とは異なり、顔面の発汗は障害されない。
・他の脳神経も障害されうる(2,3,4,5,6)。外傷や腫瘍が原因となる
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顔面神経の論文を読み既に、診断時のMRIに大きな意義がないことを知ってはいる。実際は撮ってしまっているが。顔面神経麻痺に抗ウイルス薬をだすかは、痛みが早くなくなるのならよいのだろうが、ルーチンで高価な薬を出さないように、一歩止まって考えられるようにしたい。

2016年1月1日金曜日

Autopsy in Palliative Care

緩和ケア病棟と剖検について。日本の文献も探したが、メディカルオンラインで引っかかったのが学会発表の抄録のみであった。看護研究でありそうだけどなと思いながらも、楽に探せるPubMedで検索。The Potential Use of Autopsy for Continuous Quality Improvement in Hospice and Palliative Care.Medscape J Med. 2008; 10(12): 289のごく一部のみ。さらなる他の文献の読み込みが必要そうだが、とりあえずの公開。
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緩和ケア領域での剖検について、関係者からのインタビューをまとめたものではいくつかの問題点が浮かび上がった。
①剖検は疑問に答えないかもしれない
 剖検によって、死が早すぎたかを明らかにすることや、死が訪れるかということを知りえたかという疑問を明らかにすることはできない。だが、家族が死が早すぎたと信じるのは、それが実際に早かったからというよりはむしろ、死が差し迫っていることを医療従事者は知っていたのに十分な準備ができなかったから、であると考えられている
②剖検の結果は、quality of careのプロセスやケアの改善に体系的には用いられない
 一般化するだけのデータがない。また診断のエラーがあった場合、たいてい診断の間違いは患者がホスピスに来る前に起きていて、剖検で新しい診断の情報が得られたところで前医と立ち向かうことはしたがらない、
③費用
 支払いに見合うだけの価値があるのか “bang for the buck”。ホスピスの患者の最大の関心毎は、死まで尊厳をもって扱われたかということで、この答えは剖検によっては得られない
④意図しない結果を招くかもしれない
 剖検は家族に平穏をもたらさないし、自然な悲しみの反応を遅れさせるかもしれない
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